モーパッサン「我が泉」

« Ma source », vers 1877



(*翻訳者 足立 和彦)

「我が泉」冒頭 解説 1881年、ベルギーの出版社キステメケールより刊行された『十九世紀の新サチュロス高踏派詩集』Le Nouveau Parnasse satyrique du Dix-neuvième siècle に収録されたエロチックな詩篇。「ひげの女」「69」と共に掲載されている。なおこの詩は、1891年に雑誌『プリュム』7月1日号に再掲されている。
 8音節、4行1詩節で8詩節、全32行からなる。平韻、交韻、抱擁韻が混在している。
 また、80年代前半にモーパッサン付き合った女性、通称「ジゼル・デストック」、本名ポール・パラン=デバールへの手紙の中で、この詩を彼女に見せていた形跡が認められるが、情報が断片的で確実なことはよく分かっていない。
 本詩は、おおよそ1876年から77年頃に執筆されたと推定されるが、詳細は不明である。いずれにせよ、週末ごとにボート仲間たちと大騒ぎをし、笑劇『バラの葉陰、トルコ館』に打ち興じていた時代のモーパッサンの姿を、ここにも窺うことが出来るだろう。



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我が泉


皆がそれで満足するような
接吻では僕には十分ではなく、
僕が水を汲みたい泉は
もっと深くに隠れている。

それはあなたの口の妹!
白い丘のふもとにある
傾いて、枝の縮れるやぶの
茂みの中、そこへ到達しよう。

それは閉じられている。その場所で
唇を使って、指を使って、
少し苔を開いて、飲むのだ!
どんな渇きもこれ以上に甘美ではない!

入口の近くに見つかるだろう
モーゼが叩いたあの岩が
僕は望む、僕の口がそこで汲みつくすのを
噴き出す愛のほとばしりを。

何故なら激しく力強い僕の愛撫は
波を縁まであふれさせるだろう!
僕はひざまずく。それはあなたの
体という神殿の扉!

あなたは痙攣する。あなたが生きているのを感じる。
僕は感じる、あなたの脇腹の秘密の香りが
強くなるのを、それは僕を酔わせる
僕は心を乱すあなたの香りが好きだから。

緑の森の香りよりも強く、
バラやジャスミンよりも強く。
開いた唇から流れる生きた泉よ!
僕はあなたを腕に抱いて運び去る。

神々しい香気よ! 僕の口ひげは
香炉から流れる煙のように
晩まで、僕の頭へ送り届けるのだ
僕の心が結びつけられたあの芳香を。


Le Nouveau Parnasse satyrique du Dix-neuvième siècle, Bruxelles, Kistemaeckers, 1881, p. 134-135.
Guy de Maupassant, Des vers et autres poèmes, éd. Emmanuel Vincent, Publications de l'université de Rouen, 2001, p. 234-235.




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